「これを読んでみろ。」
パネルが尽きた皆守が次に提示した紙には“喪部銛矢”と見覚えのある名前が書かれていた。
九龍の次にやってきた転校生の名前。人を見下すような雰囲気をまとっているのが印象的だった。
「も…“もべ”…いや、“もぶ”か?」
顎に手をあててブツブツと思案する九龍を、皆守はあえて突っ込まずに黙って見守る。
九龍の中では喪部は“もぶ”に決定したらしく、名前の“銛”の字に詰まっていた。
「舌の字が入ってるな…“タン”? それに“矢”…」
タンは英語だと突っ込みたくなるのを抑えて、答えが出るまで辛抱強く待った。
そして九龍は何事か閃いて、真剣な表情で勢い良く顔を上げた。
「“モブたんや”」
「……は?」
「“たん”は“ちゃん”つまり呼称、語尾の“や”は関西弁!」
「で?」
「あいつは仲間にもならないモブキャラってことなんだよ!!」
「な、なんだってー!?」
「……軽く掴んだところで、こんな感じで俺が名前を書くから読んでみろ。」
「よっしゃ、ばっちこい!」
あと、モブの使い方が間違っていることも忘れずに突っ込んでおく。
顔有り固有名詞有りのキャラは“群集”とは言わない。ちなみにタンは確信犯だった。
神鳳がうつらうつらと舟を漕いでいる頃、喪部は無性に葉佩九龍を殺したい衝動にとらわれていた。
2008/05/11