鋼の錬金術師

うん、それは知っているよ。でもね。


「俺たち、ずっといっしょにいような。」

 そう言ったら、ロイはきょとんとしてマースを見た。
 うーん、と唸って何かを思い出すような素振りを見せ、
「結婚のこと?」
 そうのたまって、マースを硬直させた。
「男同士じゃできないって、もうわすれちゃったの?」
 封印していた記憶が掘り返され、マースは頭を抱えた。

 ――ああ、そんなこともあったけなぁ…。

 あの時の自分に会うことが叶うなら「相手をよく見ればわかるはずだ」と頭を小突いてやりたい。

「うん、それは知ってる。でも、」
 そこまで言って、いったん言葉を切った。
 どう言えばいいのだろう。
 今言いたいのは「結婚したい」とかそういうことではなくて。
 将来のことはまだ何も見えないけど、その先の未来には、自分の隣にロイがいればいいな。そう思う。
 それをどう言葉にすればいいのだろう?

 そう考えていたら、次の言葉を待つロイと目が合った。
 そして、言葉を飾る必要なんてないと思い至った。

「ほら、結婚しなくたっていっしょにいることはできるだろ。オトコの友情ってやつだ。」
 少し気取って飾ってしまったかな、とも思ったが、
「マース、何だかかっこいい!」
「だろー?」
 ロイの称賛にマースは胸を張って、飾った甲斐あったと気を取り直した。

「それじゃあ、男と男の約束だぞ、ロイ!」
「うん!」
 お互いの拳を突き合わせ、こつんと音をたてた。

 “いつまでも、友達でいよう。”

 その小さな誓いの儀式を、青い空が静かに見守っていた。



2006/09/17
ちょっとこじつけだったかも…。次でラスト。

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