鋼の錬金術師

その瞳にうつるもの。


 ロイの集中力は、正直シャレにならないくらいすごいと思う。
 たとえば、俺にはさっぱりわからん本読んでるときなんか、文字通り夢中。
 そばに寄るだけじゃ気付きやしない。

 それでも、俺がいるのに気が付いてロイが顔をあげると。
 ボーっと人の顔を見上げて、首をかしげながらばつが悪そうにはにかむ。
 「ごめん、いたんだ。」とか言って。
 「いまごろ気付いたのかよ。」そう言うとロイが本を閉じて、読書の時間はおしまい。
 どこに行こうか相談しながら、とくに当てもなく外に出て、遊ぶねたを探しにいくんだ。

 その時間がホッとして嬉しくなる。
 ロイのまっ黒な瞳に俺がうつって、それが鏡みたいで。
 俺を見てるんだって、一緒にいるんだなって感じる。

 ロイとはたくさん一緒にいるけど、俺にあの本が理解できないように
 同じものを見ていても、俺とロイの見ているものってやっぱり違うんだと思う。
 いつか大人になる時には、全然ちがうものを見ているんだろうな。


 だけど、俺は
 いつか大きくなってもロイと同じ方を見て
 その瞳にうつるものを、俺も見ることができればいいなって思うんだ。



2006/07/23

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