鋼の錬金術師

散歩道


 小さな影が二つ、昼下がりの小道を歩いていた。
 小さな手をしっかりと繋いで、道端の石ころを蹴飛ばして。
 みんなでワイワイ騒ぐのも好きだけど。
 マースはこうしてロイと二人、ただブラブラ歩くのも好きだった。

「あっ」
「ん?」
 ロイはマースの手を解いて、道端に駆け寄って、その場にしゃがみ込んだ。
 そして熱心に何かを見詰めている。

 ――あーあ。またかぁ…。今日は何だ?

 “何か”にロイの関心を奪われて、マースは詰まらなそうに頭の上で手を組んだ。
 ロイがこうなると、うんともすんとも言わなくて。
 その間マースは待ち惚けをくらうことになる。

 けれど、ロイのそんな気紛れも捨てたものではない。
 野苺の群生している場所を見付けたこともあったし。
 カルガモ親子の引越しをこっそりと見守った時は結構楽しかった。

 それでも、やっぱり何だか少し悔しくて。

 ――あ、ロイ髪切ったんだ。

 ロイが“何か”を見ている間、マースは何となくロイを観察するのだった。

「何見てるの、マース?」
 視線に気付いたらしいロイが、ようやくマースの方を見た。
「んー?何って、ロイ観察。」
「なにそれ?」
 清楚に切り揃えられた髪を揺らしながら、ロイは首を傾げる。
 その次の瞬間にはお互いの顔を見合わせて、人通りの少ない道に笑い声がこだました。

「ねぇホラ、マースも見てごらんよ。」
「おー。で、何があるんだロイ?」
 マースもロイの隣にしゃがみ込んで、ロイが指差した茂みを覗き込むのだった。

 ――さて今日は何だろうな?

 そして今日の冒険が始まる。



2005/08/01
このシリーズはほのぼのとしていて好きですねぇ。激短ですが…。
この頃のロイは素直な可愛い子ですv何があってあんなに捻くれちゃったんでしょうねぇ…。

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