鋼の錬金術師

代わりに


 どうして?
 なんでパパ埋めちゃうの?
 そのことが不思議で、ママに聞いてみた。
 けど、ママは泣くばっかりで、教えてくれない。
 パパ、おしごとたくさんあるって言ってたよ?
 埋めちゃいやだよ…。

「ロイお兄ちゃん!」

 ママの腕を抜け出して、ロイお兄ちゃんのところに走った。
 お兄ちゃんは前の方にいて、お帽子をかぶっていて、前髪はパパみたいに上げてあった。
 お兄ちゃんなら、きっと何とかしてくれる。
 だって、パパよりもえらい“たいさ”だって言ってたもん。
「ねぇ、おじさんたちに言ってよ…パパを埋めないでって言ってよ…!」
 ロイお兄ちゃんはパパのお友達なんでしょう?
 どうして、何も言ってくれないの…?
「お兄ちゃん…!」
 裾をぐいぐい引っ張って、やっとお兄ちゃんはこっちを見てくれた。

 ……どうして?

「どうしてロイお兄ちゃんは泣いてないの…?」
 なんだか、そっちの方が気になった。

 どうしてパパを埋めちゃうんだろう。
 どうしてママは泣いているんだろう。
 どうしてお兄ちゃんは泣いていないんだろう…。

 え?
 ―――私はまだ止まる訳にはいかないから―――
 声が小さくて聞こえなかったけど、そう言ったの?なんのこと?
「君が、代わりに泣いてくれるかい―――エリシア?」
 お兄ちゃんは周りのひとに聞こえないくらい小さな声で、そう言った。

「…いやだよぅ…そんなふうに泣かないでよぅ…」
 なんとなく、ロイお兄ちゃんが泣いてるように見えたのかもしれない。
 ぎゅっと、お兄ちゃんの足にしがみついたら、頭をなでてくれた。
「私は泣いてなどいないよ。」
 見上げたら、お兄ちゃんはわらっていた。
 パパもママもみんながだいすきな、いつものお兄ちゃんのほほえみで。

 ママは泣いてた。
 パパのおともだちの、大きな大きな“しょうさ”さんも泣いてた。
 ロイお兄ちゃんは笑ってるけど…ほら―――やっぱり、泣いてるよ…?

 なみだを出さないで、瞳だけで泣いてるよ?

 なんだか、ぼろぼろぼろぼろなみだがあふれてきて、お兄ちゃんの顔がよく見えなくなった。
 そうしたら、ぎゅっとだきしめてくれた。

 お兄ちゃんがそう言うなら、泣いてあげる。
 だから、そんなお顔…しないで……?

 いつもみたいに、笑って?

 なんとなく、だけど。

 パパがそう言ってるような気がするの。



2005/03/16
エリシアちゃんの一人称って何ですか…?
ヒューズ…ほんとうに惜しい男を…。

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